2009年02月16日

『CHAOS;HEAD NOAH』は、5pb.とニトロプラスのコラボレーション作品として2008年4月にリリースされたPC『CHAOS;HEAD』のコンシューマ移植版。新たにヒロインごとの固有ルートが追加され、新規グラフィックも多数用意されております。
PC版の発売前から、アニメ化、キャラクターソングと追いかけてきた弊社としても、“ぜひなにか”と考えていたところ、『CHAOS;HEAD NOAH』のプロモーションを担当するニトロプラスよりゴーサインがでましたので、やっちゃいます。
『CHAOS;HEAD NOAH』発売記念の集中連載!
まぁ、本日2月16日から発売日の2月26日まで、毎日(土日を除く)『CHAOS;HEAD NOAH』の話題を取り上げようというだけなんですがね。
“だけ”って言うな! 1人で全部用意するのは大変なんだぞ!!
・
・
・
お見苦しいところをお見せしました。
これから集中的に『CHAOS;HEAD NOAH』の記事を取り上げていきますので、よろしくお付き合いください。
そんなわけで企画第1弾となるわけですが、いきなりでっかいネタを持って来ちゃいました!
『CHAOS;HEAD NOAH』開発スタッフのロングインタビューです。
インタビューに応えていただいたのは、プロデューサー松原達也氏、シナリオライター林直孝氏、原画の松尾ゆきひろ氏の3人。
まだソフト発売前だというのに、『CHAOS;HEAD NOAH』の奥の奥まで覗けるような、興味深い内容になっております。そして長いです(笑)
最後までお読みいただければ、幸いでございます。
◆『CHAOS;HEAD NOAH』開発インタビュー

※プロデューサー松原達也氏(写真右)とシナリオライター林直孝氏(写真左)
―本日はよろしくお願いいたします。まずは、それぞれ自己紹介からお願いします。
松原氏 『CHAOS;HEAD NOAH』のプロデューサーです。『CHAOS;HEAD』全体のディレクションもやってます。
林氏 シナリオをやってます、林です!
松尾氏 原画を担当させていただきました、松尾です。よろしくお願いします。
松原氏 松尾はサブキャラのデザインもやってますね。
松尾氏 そっか、サブキャラのデザインと原画と演出面のアイディア出しなどもやってます。
―原画だけでなく、ゲームの開発面にも参加されているんですね。
松尾氏 そうですね、2Dの演出面や絵コンテ起こしとか、そういうところから担当しています。2Dの絵作りにはわりと深く関わってますね。
◆『CHAOS;HEAD』が出来るまで、のこと
―基本的な話になりますが、今回ニトロプラスさんとのコラボはどういった経緯で実現したんでしょうか?
松原氏 そもそも企画が始まった時は、コンシューマで出すのか、PCで出すのかといったプラットフォームも決まっていなかったんですね。で、物語のプロットからコンシューマ向きではないものだったので、「PCで行こうか」という話になったんです。それで「どこのメーカーと組もうか」と考えたとき、最初に名前が挙がったのがニトロプラスさんだったんですよ。ニトロプラスさんの持つ独特な雰囲気がこの『CHAOS;HEAD』に合うんじゃないかな、ということがありまして、弊社の社長、志倉とプレゼンにお伺いしました。
それで、志倉が延々と6時間くらい長〜いプレゼンをやって(笑)、どうですか? と。
―プレゼンと言うよりも、語りつくした感じですよね(笑)
松原氏 その時点でプロットというか、最後の方までお話が出来ていて、それを読み上げるというか、「こんな物語なんですが、どうですか?」という感じでした(笑)
―企画の出発点は、やっぱり志倉さんなんですね。
松原氏 そうですね、志倉の頭の中にある企画を我々が形にしたという。そもそも、僕が入社した時にはすでにあった企画なんです。
―その志倉さんの頭の中の物語をシナリオにしていくのは、林さんだったと思うんですが、なかなか大変だったのではないかと(笑)
林氏 志倉の頭の中にあるイメージというのが明確にあって、それをまず理解しなければいけないということが、まず大変でしたね。連日連夜、会社に泊まりこみつつ延々と志倉と話して、その世界観をまず理解しようというところから始めました。
書きだすまでに結構間が空いて、企画の立ち上げから何ヶ月か経ってからになりましたね。
―企画自体はPC版発売のかなり前から動いてらしたんですね。
林氏 僕の方からもアイディアを出していきつつ、物語としての形にしていったという、作り方でした。
―ニトロプラスさんの作品は、シナリオが大きな特徴だとは思うんですが、その辺を意識されたりしました?
林氏 意識のすり合わせということは特にしてませんが、やっぱりニトロプラスさんの作風というのは意識しました。
もともと作っていたプロットは、実はニトロプラスさんっぽくなかったんです。
なので、ニトロプラスさんに決まった時に1から作り直すつもりですべて破棄して、ニトロプラスさんっぽさがありつつも5pb.ぽい所もあるというシナリオに作り直していきました。
―じゃあ、最初はもう少しやわらかいシナリオだったんですか?
林氏 そうですね、最初はもっと……。
松原氏 漫画チックでしたね。
林氏 そう、硬派っぽいところはあまりなかったんです。
松尾氏 最初は漫画やアニメといったエンタテインメントでよくある雰囲気のつくりというか、派手なバトルとか闇組織とか、そういった雰囲気でした。出来上がってみると、渋いものになりましたね。
林氏 『CHAOS;HEAD』のダークな雰囲気も、最初はあまりなかったんですよ。どちらかというと、恋愛色も無理やり取り込みつつだったので、ちょっと中途半端になっていたかもしれませんね。なので、作りなおしたことでシャープになって、1本すじが通りました。
作り直したこと自体はすごく良かったと思っています。
―原画の作業としては、そのシナリオがある程度出来てからの作業になるとは思いますが。
松尾氏 自分らはもともとKIDという会社に居たんですけど、そこが解散してしまって。その直後に志倉さんのお誘いで5pb.に入って、その時にはある程度骨組みが出来ている段階で、ささきむつみさんのキャラクターデザインもすでにあったんです。それを見せてもらって、「じゃあ、後は頼んだ」という形で(笑)
でも、自分たちがどの段階から手をつければいいのか、スタートに時期の見極めが結構難しかった覚えがありますね。開発の仕組み自体が、松原の方が別の会社の方法で作っていたので、お互いに「どういう指示が来るのか」というところから始めました。歯車が上手くかみ合って走り出すまでは、ちょっと時間がかかりましたね。
松原氏 最初の方はね。
僕はもともと、トンキンハウスだったんですね。なので、仕様書の作りが、トンキン式とKID式の違いというのはありました。
松尾氏 うん、どうしても育ってきた土壌、個人個人のやり方というのは違いがありました。描きだせば、あとは各々の仕事として動くしかなくなるのでかまわないんですが、最初の設計図の部分で「来ないけど大丈夫なんだろうな?」と(笑)
―『CHAOS;HEAD』は5pb.&ニトロプラスのコラボレーションではあるけれど、5pb.社内でもKIDとトンキンハウスのコラボレーションがあったんですね(笑)
結果としては、先ほど林さんが言われたようにシャープになってKIDの路線とも違うものになりましたしね。
松尾氏 そういった、主にニトロプラスさんが持っている雰囲気は絵の面でも協力頂いているので、上手く出てくれたかなと思います。本来はささきむつみさんの絵だとこういう作品に合わせるのは難しいのかなという気持ちがあったんですけど、最初の色決めの段階から試行錯誤を繰り返してその雰囲気を作り上げていくところから始めましたね。
―キャラクターのイベントCGだとかはまだ合わせられるとは思うんですが、ニュージェネ事件のシーンとかは、明らかに雰囲気が違いますからね。
松尾氏 その辺はニトロプラスさんが全部作ってくれています。雰囲気はくっきり分かれているんだけど、上手く相乗しているかなと思います。
◆『CHAOS;HEAD NOAH』移植、のこと
―PC版の流れからコンシューマに移植することが決まったのは、どの段階になるんでしょうか?
松原氏 どの時期だろう……
林氏 えーと、発売直後くらいですよ。
発売後に『CHAOS;HEAD』の打ち上げみたいなものをニトロプラスさんと一緒にやったんですけど、その時点でもう志倉が話をしていましたからね。「えっ?」って、僕らはその時が初耳だったんですけど(笑)
Xbox 360に移植と聞いて、すごく驚いた記憶があります。
松原氏 あ、そうか。でも、僕はもうちょっと前から話はきいてたよ(笑)
松尾氏 自分らKIDに居た身としては、PCで出すんなら絶対にコンシューマに移植するだろうと、漠然とした思いはあったんですけどね(笑)
なので、実際に移植と聞いても「やっぱりね」と驚きはしなかったです。ただ、それがXbox 360というのはビックリしました。最初に思ったのは、大丈夫か?(笑)
松原氏 いやいや、Xbox 360は良いハードですよ。
松尾氏 当時はXbox 360というものについて、自分がよく知らない市場でしたし、作ったことがないハードだったので。
松原氏 実際のところ、『CHAOS;HEAD』を次世代ハードに移植しようと考えたところ、Xbox 360以外に選択肢がないんですよね。開発環境的にPCからXbox 360は移植作業がしやすいということもありますが、最初の出発点として、移植するにあたって"削る"ということはしたくなかったんです。『CHAOS;HEAD』の表現の部分が、移植可能なコンシューマ機というとXbox 360しかないんです。
松尾氏 コンシューマ化というと、ユーザーの一部ではそういう表現が抑えられることを心配している方もいるとは思うんですけど、『CHAOS;HEAD NOAH』ではそんなことはありません。
◆追加要素の目玉「ヒロイン固有ルート」、のこと
―シナリオ面でのボリュームも大幅にアップしていますが、やはりPC版で書き足りない所があったんでしょうか。
林氏 もともとPC版は1本道だったので、やれることが限られていました。バリエーションが少なくなるので、どうしても描ききれない部分があった。PC版のシナリオは主人公の"拓巳"くんのお話であって、ヒロインたちはあくまで登場人物の1人扱いになってしまっているので、そこを補完したいなという気持ちが僕の中にありました。
志倉から「移植にあたってシナリオを追加するとしたら、どうする?」って訊かれたとき、僕は「ヒロインの個別ルートを作りたいです」と。そうしたら「じゃあ、それで」ってあっさり通ってしまいました(笑)
ヒロインたちをしっかり描いてあげたい、というのが今回のシナリオの出発点ですね。PC版では描かれなかったヒロインたちの思いですとか、曖昧になっていた過去ですとか、きちんとやりつつちょっぴり恋愛要素もあったり、無かったり(笑)
―固有ルートというと、わりと恋愛要素がクローズアップされるとは思いますが。
林氏 『CHAOS;HEAD NOAH』の場合は固有ルート=恋愛、というわけでもないんです。主人公がああなので、なかなか恋愛させてあげられないというのもありまして(笑)
固有ルートの扱いとしては、ヒロインたちのお話ですね。
松原氏 あくまで『CHAOS;HEAD』という世界観の中で、ヒロインのストーリーをどうみせるかに重点を置いています。
―イラスト面でも、ヒロインのCGは増えてますか?
松尾氏 そうですね、PC版ではなかなか描けなかった"拓巳"と絡んでいる絵が今回増えてます。今までは悲惨な目にあっている絵はあったんですが、そういった絡みの絵はあまり無かったので、改めて描けたのは良かったですね。女の子とイチャイチャしてる、ということでもないんですけど(笑)
―そういったイラストの方が描きやすい、といったことはありますかね。
松尾氏 いやー、どうなんでしょう。でも、あまり殺伐とした絵ばかりだと心が難しくなってくるんですよね(笑)
だからといって、女の子とキャッキャ、ウフフやっている絵ばかりだと物語として盛り上がらないので。シナリオで描かれていることと、ディレクションで求められている絵を作っていくのが自分に与えられた役割です。それを、それぞれが思っているもの以上の表現が出来て、ユーザーさんに自然に見てもらえるように出来るのがいいんじゃないかなと。
―では、割と開発の現場でやりたいことが出来ているという形なんですね。
林氏 『CHAOS;HEAD NOAH』に関しては、現場の人間の考えを反映させる形で追加部分を作っています。『CHAOS;HEAD』の色々な解釈が詰め込まれている、と考えて頂いていいと思います。
PC版は完全に志倉の世界だったんですけど、そこに僕らがPC版を経て理解した『CHAOS;HEAD』の世界をさらに付け加えてゴチャゴチャにした。そういうものに『CHAOS;HEAD NOAH』はなっています。
―PC版をプレイした人間としてちょっと気になっていたんですが、ヒロインごとのルートが出来て、じゃあもとからあった1本道のシナリオには何か追加はないんでしょうか。
松原氏 演出面ではもちろんパワーアップしていますし、PC版であったルートの方もとある条件を満たすとストーリーの中に挟み込まれる、いわゆる「インターミッション」がごっそり変わるようになっています。あの場面で実は他のキャラがこういう事をしていたんだというような感じのシナリオが挟みこまれるようになっています。
林氏 1周だけじゃなくて、2周目以降も楽しめる作りになっています。PC版で曖昧にされていた部分も、今回はきっちりわかるようにシナリオでわかるようにしています。
―じゃあ、PC版をプレイして「ある程度、話がわかっているからもういいや」とは思わずに、遊んでみて欲しいところですね。
林氏 また新しい発見があると思います。
松原氏 謎解き編、みたいな感じに2週目以降も遊べますね。
◆アニメとの相乗効果、のこと
―『CHAOS;HEAD NOAH』の開発中にアニメ化もされましたが、その反響というか、影響を受けた部分はありますか?
松原氏 お遊びなんですが、アニメとのリンク要素で“拓巳”の部屋に置いてあったフィギュアのイラストをお借りして『CHAOS;HEAD NOAH』の部屋に置いてみたりと、そういったちょっとしたコネタを仕込むような事もやっています。
林氏 固有ルートを作るにあたって、アニメ版のプロットを見せていただきました。そこからインスピレーションを得た部分もあります。“セナ”編は、特にそうですね。アニメの展開にわざと似せていて、そこに僕なりの解釈を入れて違う展開にしています。
松尾氏 アニメは観てもらえる規模がやっぱりでかいので、反響も大きいですね。地上波は関東ローカルだけで、全国で観てもらうにはキッズステーションしかなかったんですけど、それでも『CHAOS;HEAD』というものを知ってもらうにはすごく役に立ったと思います。
アニメというものは一方的に流れるもので、深いところまで理解できない部分がどうしてもあると思うんです。でも、『CHAOS;HEAD』のアニメはPC版に沿って作ってもらえたので、違和感無く『CHAOS;HEAD NOAH』にも入ってもらえます。
あと、自分としてアニメ版と見比べてどう思われるか気になるのは、やっぱり絵の部分です。ゲームは動かない分、描き込めているということで違いがあるので、そういうところで原作としての『CHAOS;HEAD』の絵を見ていただきたいという気持ちもありますね。
―アニメが放送されて、“星来”のファンが増えたんじゃないかなと勝手に思っているんですけど(笑)
松尾氏 予想外の出番が多かったというか。“星来”はゲームでもアニメでも、自分が予想していたものとは違った動きをしているので、観てて笑っちゃったんですけど(笑)
「すごい扱いだ、こいつ!」とか思いながら観てました。
林氏 “星来”はアニメになって、より魅力的になりましたね。“星来”に関しては、“動き”というものが大きいと思うんですよ。
松尾氏 便利なキャラというのもあるとは思うんですが……ある意味象徴的だし。
あと、アニメで部屋に貼られているポスターが、まんまPC版と同じものだったのが観てて面白かったですね。「自分らの描いたものが、そのまま使われてるわ―」って(笑)
松原氏 ちょっと嬉しいよね。
林氏 PCの壁紙とかもね。
松尾氏 “拓巳”のPC周りは、全部そんな感じでしたね。
―PCからコンシューマへの移植の間に、アニメをはじめコミックやライトノベルなどさまざまなメディアミックスがありましたが、全体的に『CHAOS;HEAD』が広がっているという手ごたえはありますか?
松原氏 それは凄く感じました。特にアニメがはじまってからPC版の本数がさらに一段伸びました。アニメを入り口にユーザーが増えてくれているという実感はあります。
◆その他の追加要素、のこと
―ヒロインの固有ルートの他に、『CHAOS;HEAD NOAH』の追加要素というとどういうものがあるんでしょう。
松原氏 シナリオの他には、ゲーム中の挿入歌はすべて新曲になっています。あと、今まであったイベントCGにも手を入れたものもあります。
ムービーなんかも、後半のクライマックス部分に新しく入れたりしていますし、演出面での強化は大きいですね。
松尾氏 絵自体もハイデフになっています。
―やっぱり違いがあります?
松尾氏 自分は原画をすべて鉛筆で描いているので、線の粗い部分が目立っちゃうんですね。そういった部分は困るかな(笑)
松原氏 鉛筆のかすれとか、そういった部分も全部見えちゃうよね。
松尾氏 それ自体がデジタルにはない味だと思って、ずっと鉛筆で描いているんですけどね。ささきむつみさんは以前から全部デジタルに移行しているので、その線の細さを意識しながら描いていた部分もあるんですが、線自体も難しくなりました。まぁ、そんな綺麗に映されたらね、粗があったら目立っちゃう(笑)
これから全部デジタル、っていうことになると綺麗かもしれないけど、勢いとかがどうなっちゃうのかなと。そういう粗さも勢いという部分に生きていると思うので、そこを見ていただければなと。
―そこを理解してくれるユーザーもちゃんといるとは思いますよ。
松尾氏 より、そういう細かい部分がわかるようになってきたということで、自分たちが伝えたいと思っている意図がそのまま伝わるんだったら、怖がる以上に良いことだと思います。塗りも綺麗にして、ニトロプラスさんでやっていただいた演出もより伝わるようになると思うので、単純に綺麗になっているということ自体が絵の部分のパワーアップだと考えています。
そこを意識しないで自然に受け入れてもらうことが、絵や音楽にとって一番の達成点なんですが、それだけだと作っている側はちょっとさみしい(笑)。なので、「ああ、なるほどね」と気づいてもらえると嬉しいです。
―ささきむつみさんのキャラデザを生かす、ということも重要ですしね。
松尾氏 絵はささきむつみさんのキャラクターありきでやらせていただいています。キャラクターデザインだけでなく監修もやっていただいているので、デザイン意図は崩さないように気を付けて描いています。
―ゲームのCGも違和感無く見れました。
松尾氏 自分は『CHAOS;HEAD』の前に『Memories Off』の2作品で同じようにささきむつみさんと仕事をさせて頂いていたので、積み重ねたものもありつつ違和感を無くせるようにやりました。
ゲームを遊んで絵を見た人が自然に受け入れてくれていれば、自分の中で成功ですね。
―音楽面でもボーカル曲を多数追加、というのはやっぱり5pb.さんの強みだと思いますが、それはやっぱりキャラクターソングがあったからなんでしょうか。
松原氏 キャラクターソング自体は、『CHAOS;HEAD NOAH』があるから歌を作ろうという企画でした。Xbox 360版とほぼ同時に始まっていて、「これから作るキャラソンを『CHAOS;HEAD NOAH』に絡めていきたい」というスタートでした。なので、歌詞の内容とかも密接に関わっていますね。
林氏 ほぼ『CHAOS;HEAD NOAH』のシナリオ作りとキャラソンの音楽・歌詞作り作業は同時進行だったので、強くリンクしています。曲に合わせてシナリオを作っているし、シナリオにあわせて曲を作っているという、お互いに良い方向で盛り上がるようにしています。リンク性がとても高いキャラソンだと思います。
―キャラソンはすでに聴かせていただいているんですが、シナリオに深く関わる歌詞に思えましたね。
林氏 その分、調整に結構苦労してます(笑)
ちょっとバッドな雰囲気の終わり方なのに、明るい雰囲気の曲だったりすると、演出をどう調整しようかなと。結果的には上手く調整できたと思います。
松原氏 あと、システムの細かい部分についてですが、コンフィグで設定してもらえれば「スキップ中でも妄想トリガーで止まる」ようにできます。
林氏 あー、そこはPC版で不評だったですからね。
松原氏 この場でちゃんと言っといた方がいいかなと(笑)
◆魅力的なキャラクター、のこと
―キャラソンの話の流れで、それぞれお気に入りのキャラクターやエピソードがありましたらお願いします。
松原氏 『CHAOS;HEAD NOAH』になって、僕は“梢”が好きになりましたね。
今回の“梢”ルートというのが、ある意味CEROレーティングで“Z”になった原因というか。
(一同笑)
松原氏 PC版では隠されていた“梢”の本当の本心が見えるというか、このキャラはどういうことを考え、どういう生き方をしてたかがちゃんとわかるようになってます。“梢”エンドは、良いですよ。
松尾氏 おかげで血まみれの絵ばかり描かされました(笑)
林氏 血みどろですね、“梢”ルートは。
松尾氏 あと、「こういう演出にしたらいいんじゃない?」って自分で言ったがために、すごいでっかい紙に原画を描くはめになったりとか(笑)
林氏 PC版で血まみれキャラというと“梨深”だったんですけど、“梢”はそれを上回る血まみれっぷりなので、お楽しみに(笑)
ただ、それだけじゃなくて“梢”の可愛い部分もちゃんと描いています。どうしても初登場が他の5人のヒロインよりも遅めだったこともあり、PC版では出番が少なかったんですよね。
―“セナ”とセット、というイメージはありますね。
林氏 そうですね、それで“梢”の可愛い部分をあまり深く掘り下げられなかったんですが、今回はキチンと描いて、可愛く。でも、血まみれ。
一番の見せ場は、やっぱり「ちんすこう」ですよね。
松原氏 あぁ「ちんすこう」ね(笑)
林氏 "拓巳"が“梢”に「ちんすこう」と言わせようとする選択肢があるんですけど(笑)
そこには、あえて今回イベントCGを作りました。僕はそのシーンを何回やっても噴いちゃうんです(笑)
自分で書いてそうなので、そうとう面白いことになってます。そこは期待していただければ。
―それでは、林さんのお気に入りのキャラというと?
林氏 今回、“セナ”ルートでお父さんの出番が増えてます。この親子の会話には、ちょっと哲学的な部分があって、現実と妄想の境界があいまいになるというテーマを一番表している会話をさせていますね。
PC版だと、“セナ”が一方的にお父さんを憎んでいて、最後にちょっとかわいそうな目にあってしまうんですが、実は絡みとしてはあまりなかったんですよ。
今回、改めて“セナ”ルートで絡ませたことで2人の微妙な心境、複雑な関係を描けて、なおかつテーマも描けたと思います。なので、この2人のセットは良いなと。
―では、松尾さんは?
松尾氏 自分はどうかな。絵的な話を言わせてもらえば、今回は“あやせ”が面白かったかなと思います。あの人は特殊なので、いろんな面を描くことになるんですが、そういうことを含めて。あと、演出的にもアイディアを出して見せ場になるシーンを作っているので、それがうまく受け入れてもらえれば達成感が高まるんじゃないかなと。
林氏 僕は、“あやせ”はよりエロくなったと思います。榊原ゆいさんにそうとう頑張っていただけまして。「それ、やりすぎじゃないの?」って思うぐらい(笑)、やっていただけました。公式サイトのサンプルボイスを聞いていただければわかるかと。
あのシーンを録る時に、榊原さんに「本気でやっていいですか?」っていわれて、「ぜひお願いします」と軽い気持ちで答えたんですが、聴いてみたらビックリしちゃいました(笑)
松尾氏 収録現場、見たかったな〜(笑)
林氏 僕と松原で、聴きながら「これ大丈夫かな…」って。
松原氏 ドキドキしちゃいました。
林氏 いろんな意味でドキドキ(笑)
―そういうドキドキは、キャラソンCDの妄想トリガーボイスドラマにもありますよね。
林氏 榊原さんの声が色っぽいので……溢れ出る、エロス! ですかね(笑)
松尾氏 “あやせ”は、妄想でもそういうシーンが多いキャラですからね。下着姿から始まって、スク水があり、衣装替えも結構多いキャラです。あの服とかも、自分でデザインしましたが大変なんですよね(笑)
―服装のパターンも『CHAOS;HEAD NOAH』では結構増えているんでしょうか。
松尾氏 そうですね、服装はちょこちょこ増えてます。
―パターンを多くするとその分作業量も増えるので、大変ですよね。
松尾氏 『CHAOS;HEAD』は目パチもあったので、地道に大変でした。あとは、単純に全部1人で描いているというのもあります(笑)
林氏 今回は“拓巳”も気持ち悪いキャラのまま、吉野さんに全力で演じていただいたので、そこも楽しみにしていただきたいです。
松原氏 “拓巳”というキャラは凄いね。
林氏 なんであれが受け入れられたのか、今だに不思議です(笑)
松尾氏 今のゲームをプレイしているユーザーにとって、それだけああいった生活が違和感なく受け入れられるということなのかな。
―そういうディテールもありますが、キモイ人格になったバックボーンがまだ理解できる範囲だったからじゃないでしょうかね。
松尾氏 “拓巳”に関しては、キモイままでバックボーンとかなくても良かったけどね。だって、ある意味憧れの生活だもの(笑)
林氏 ダメな方向ですけど、でも憧れますね(笑)
松原氏 あのコンテナハウスは、ちゃんとクーラーが付いてるんだよね。
林氏 あとトイレは、ちゃんとビルのものを使っています。洗面台とシャワーは、部屋の外にあります。今回はその部分もちゃんと出てきます。
松尾氏 結構みんな疑問に思っていたみたい(笑)
林氏 逆にそこで違和感を与えているんですよ。ビルの屋上にコンテナがある、そして住んでいるということに違和感を感じていただければ、こちらの意図としては成功です。あえてリアルじゃなくしている、ということですね。
◆弊社の訊きたかった話、のこと
(主にゲロカエルんについて)
―演出面では、バトル描写の強化といった事はないんでしょうか。
松尾氏 バトルらしいバトルが全然ありませんからね(笑)
ディソード自体は“心の鍵”の表れで武器ではないので。そもそも、企画の最初は戦闘シーンとかが1つもないかもしれないと言われてたくらいです。
松原氏 でも、今回は最後の方の戦闘演出はパワーアップしています。
林氏 固有ルートでも、新しい戦闘シーンがあります。血みどろになったりします(笑)。
松尾氏 ディソード自体のデザインは、CHOCOさん(『CHAOS;HEAD』プロダクトデザインを担当)がすごくいいものを出してくれました。あのデザインをニトロプラスさんの方で3Dに起こしていただいたものを、CGにあわせています。それありきで、良い戦闘シーンができていると思います。
3Dであわせていく作業というのは、自分はここまでのことをやったことが無かったので、その辺では苦労したんですけど、上手くアジャストして助けていただけました。
松原氏 最初から3Dありきで作業していたからね。
松尾氏 “野呂瀬”のディソードとか、CHOCOさんは容赦ないデザインを出してきますからね(笑)
逆に、ゲロカエルんは楽な気持で作らせていただきました。
―自分もグッズのストラップを愛用しているんですが、これは秀逸なデザインですよ(笑)

松尾氏 みんなそう言ってくれるんだけど、本当かな〜って思いますよ(笑)
劇中でも言われてますが、なんたる手抜きデザイン。それが本当に作られて売られているというのが(笑)
みんな、洗脳されてない?
林氏 されてます。
松尾氏 ね。
―ゲロカエルんのストラップは、新しいバージョンも制作中みたいですね。
松尾氏 デブっちょゲロカエルんですね。
―いつ頃発売されるか気になっているんですが。
ニトロくん (小声で)春くらいじゃないかな〜。
―やっぱりイベント会場とかで販売されるんでしょうか。
ニトロくん (小声で)どうかな〜。
(一同笑)
松尾氏 なんでそこでぼやかすんですか(笑)
ニトロくん まだ決まっていないので(笑)
オフィシャル通販で販売するか、どうかですね。
松尾氏 ストラップがまた良くできているんですよ。すごい再現度ですよね。
―さわった感触がまた良いんですよ。
松尾氏 そうなんですよね。そこが良く工夫してくれたなと。
ニトロくん でも、次のデブっちょゲロカエルんは携帯電話には付けられないですね。
松尾氏 あー、デカイですからね。
ニトロくん 女子高生とかにつけて欲しいですね。
松原氏 そういうムーブメントになったら、嬉しいですよね。
松尾氏 デブっちょの他にも、劇中で名前が登場する物はデザインラフもあるんですけど、実際に商品にするためには一部改造が必要だったりしました。
『CHAOS;HEAD』は、こういったグッズだったり周辺の展開が大きくあったので、それもあり認知度が高まってくれたんだと思います。それがまた広がっていけば、さらに面白いことができるんじゃないかなと。
◆今後の展開? のこと
―『CHAOS;HEAD』からは離れますが、昨年末のニトロプラスさん発表会でコラボ企画の第2弾が進行中と明かされましたが。
松原氏 現在言えることは、“秋葉原”っていうことだけですね。
―ゲーム、ではある?
松原氏 ゲームです。
―特に『CHAOS;HEAD』の続編ということでは?
林氏 続編では…ないですね。
松尾氏 一応は妄想科学ノベルシリーズだよね。
林氏 ちょっと違うよ。
松原氏 でもまあ、同じ(ニトロプラスさんとの)流れの中で作っていく作品ですね。表に出る雰囲気は違うかもしれませんが。
林氏 根底にあるテーマというか、コンセプトは同じものですね。
―開発は5pb.さんということなんですか。
松原氏 ………まだ決まっていないんです、ぶっちゃけ(笑)
―では、発表を楽しみに待っています(笑)
◆最後に
―それでは、最後に発売を待っているファンへのメッセージをお願いします。
松原氏 『CHAOS;HEAD NOAH』は、Xbox 360でのノベルゲームの第1弾です。だからというわけじゃないですけど、かなり気合を入れて作りました。PC版から入った方もアニメから入った方も楽しめる作りになっていますので、ぜひぜひ、期待をしていてください。
林氏 固有ルートが入ったことで、ヒロインの可愛らしさが強調されています。と、同時に怖さも強調されている(笑)
すべての固有ルートに、一筋縄ではいかないシナリオを用意しているので、PC版をプレイされている人もアニメを観た方も新たなドキドキを感じていただければと思います。
松尾氏 Xbox 360本体と一緒に買って後悔をしない! と思いたい(笑)
これをきっかけに買ってもらえれば、十分遊べる作品になっています。5pb.とニトロプラスさんという、2つの会社が協力して作り上げているので。お互いに自信がなければ、そういうタッグも組めないですから。これからの動きにつなげるためにも、その出来上がりを皆さんにぜひ見て頂いて、どしどしご意見を送っていただきたいです。やっぱり感想がないと作り手側もね。
自分もXbox 360本体ごと買います(笑)
―ありがとうございましたっ!
ロングインタビュー、いかがだったでしょうか。
弊社もPC版はプレイさせていただいているのですが、改めて『CHAOS;HEAD NOAH』も遊びたくなってまいりました。発売まで、あと10日か……。
明日以降も『CHAOS;HEAD NOAH』関連の記事を順次掲載していきますので(内容はまだ秘密)、ファンの皆様におかれましてはぜひチェックしていただければと思います。
それでは、まったあっした〜。
■『CHAOS;HEAD NOAH』
メーカー:5pb./ニトロプラス
プラットフォーム:Xbox 360
ジャンル:妄想科学ADV
発売日:2009年2月26日(木)
価格:初回限定版 9,240円(税込)
通常版 7,140円(税込)
スタッフ(敬称略)
企画・原作・主題歌:志倉千代丸
ディレクション:松原達也
キャラクタデザイン:ささきむつみ
プロダクトデザイン:CHOCO
シナリオ:林直孝(5pb.)
原画 :松尾ゆきひろ(5pb.)
(C)2008-09 5pb./Nitroplus/RED FLAGSHIP
■関連記事
発売記念イベントも開催決定! ヒロインごとにシナリオを追加したXbox 360『CHAOS;HEAD NOAH』が2月26日Re;boot
■関連サイト
『CHAOS;HEAD NOAH』公式サイト
“だけ”って言うな! 1人で全部用意するのは大変なんだぞ!!
・
・
・
お見苦しいところをお見せしました。
これから集中的に『CHAOS;HEAD NOAH』の記事を取り上げていきますので、よろしくお付き合いください。
そんなわけで企画第1弾となるわけですが、いきなりでっかいネタを持って来ちゃいました!
『CHAOS;HEAD NOAH』開発スタッフのロングインタビューです。
インタビューに応えていただいたのは、プロデューサー松原達也氏、シナリオライター林直孝氏、原画の松尾ゆきひろ氏の3人。
まだソフト発売前だというのに、『CHAOS;HEAD NOAH』の奥の奥まで覗けるような、興味深い内容になっております。そして長いです(笑)
最後までお読みいただければ、幸いでございます。
◆『CHAOS;HEAD NOAH』開発インタビュー

※プロデューサー松原達也氏(写真右)とシナリオライター林直孝氏(写真左)
―本日はよろしくお願いいたします。まずは、それぞれ自己紹介からお願いします。
松原氏 『CHAOS;HEAD NOAH』のプロデューサーです。『CHAOS;HEAD』全体のディレクションもやってます。
林氏 シナリオをやってます、林です!
松尾氏 原画を担当させていただきました、松尾です。よろしくお願いします。
松原氏 松尾はサブキャラのデザインもやってますね。
松尾氏 そっか、サブキャラのデザインと原画と演出面のアイディア出しなどもやってます。
―原画だけでなく、ゲームの開発面にも参加されているんですね。
松尾氏 そうですね、2Dの演出面や絵コンテ起こしとか、そういうところから担当しています。2Dの絵作りにはわりと深く関わってますね。
◆『CHAOS;HEAD』が出来るまで、のこと
―基本的な話になりますが、今回ニトロプラスさんとのコラボはどういった経緯で実現したんでしょうか?
松原氏 そもそも企画が始まった時は、コンシューマで出すのか、PCで出すのかといったプラットフォームも決まっていなかったんですね。で、物語のプロットからコンシューマ向きではないものだったので、「PCで行こうか」という話になったんです。それで「どこのメーカーと組もうか」と考えたとき、最初に名前が挙がったのがニトロプラスさんだったんですよ。ニトロプラスさんの持つ独特な雰囲気がこの『CHAOS;HEAD』に合うんじゃないかな、ということがありまして、弊社の社長、志倉とプレゼンにお伺いしました。
それで、志倉が延々と6時間くらい長〜いプレゼンをやって(笑)、どうですか? と。
―プレゼンと言うよりも、語りつくした感じですよね(笑)
松原氏 その時点でプロットというか、最後の方までお話が出来ていて、それを読み上げるというか、「こんな物語なんですが、どうですか?」という感じでした(笑)
―企画の出発点は、やっぱり志倉さんなんですね。
松原氏 そうですね、志倉の頭の中にある企画を我々が形にしたという。そもそも、僕が入社した時にはすでにあった企画なんです。
―その志倉さんの頭の中の物語をシナリオにしていくのは、林さんだったと思うんですが、なかなか大変だったのではないかと(笑)
林氏 志倉の頭の中にあるイメージというのが明確にあって、それをまず理解しなければいけないということが、まず大変でしたね。連日連夜、会社に泊まりこみつつ延々と志倉と話して、その世界観をまず理解しようというところから始めました。
書きだすまでに結構間が空いて、企画の立ち上げから何ヶ月か経ってからになりましたね。
―企画自体はPC版発売のかなり前から動いてらしたんですね。
林氏 僕の方からもアイディアを出していきつつ、物語としての形にしていったという、作り方でした。
―ニトロプラスさんの作品は、シナリオが大きな特徴だとは思うんですが、その辺を意識されたりしました?
林氏 意識のすり合わせということは特にしてませんが、やっぱりニトロプラスさんの作風というのは意識しました。
もともと作っていたプロットは、実はニトロプラスさんっぽくなかったんです。
なので、ニトロプラスさんに決まった時に1から作り直すつもりですべて破棄して、ニトロプラスさんっぽさがありつつも5pb.ぽい所もあるというシナリオに作り直していきました。
―じゃあ、最初はもう少しやわらかいシナリオだったんですか?
林氏 そうですね、最初はもっと……。
松原氏 漫画チックでしたね。
林氏 そう、硬派っぽいところはあまりなかったんです。
松尾氏 最初は漫画やアニメといったエンタテインメントでよくある雰囲気のつくりというか、派手なバトルとか闇組織とか、そういった雰囲気でした。出来上がってみると、渋いものになりましたね。
林氏 『CHAOS;HEAD』のダークな雰囲気も、最初はあまりなかったんですよ。どちらかというと、恋愛色も無理やり取り込みつつだったので、ちょっと中途半端になっていたかもしれませんね。なので、作りなおしたことでシャープになって、1本すじが通りました。
作り直したこと自体はすごく良かったと思っています。
―原画の作業としては、そのシナリオがある程度出来てからの作業になるとは思いますが。
松尾氏 自分らはもともとKIDという会社に居たんですけど、そこが解散してしまって。その直後に志倉さんのお誘いで5pb.に入って、その時にはある程度骨組みが出来ている段階で、ささきむつみさんのキャラクターデザインもすでにあったんです。それを見せてもらって、「じゃあ、後は頼んだ」という形で(笑)
でも、自分たちがどの段階から手をつければいいのか、スタートに時期の見極めが結構難しかった覚えがありますね。開発の仕組み自体が、松原の方が別の会社の方法で作っていたので、お互いに「どういう指示が来るのか」というところから始めました。歯車が上手くかみ合って走り出すまでは、ちょっと時間がかかりましたね。
松原氏 最初の方はね。
僕はもともと、トンキンハウスだったんですね。なので、仕様書の作りが、トンキン式とKID式の違いというのはありました。
松尾氏 うん、どうしても育ってきた土壌、個人個人のやり方というのは違いがありました。描きだせば、あとは各々の仕事として動くしかなくなるのでかまわないんですが、最初の設計図の部分で「来ないけど大丈夫なんだろうな?」と(笑)
―『CHAOS;HEAD』は5pb.&ニトロプラスのコラボレーションではあるけれど、5pb.社内でもKIDとトンキンハウスのコラボレーションがあったんですね(笑)
結果としては、先ほど林さんが言われたようにシャープになってKIDの路線とも違うものになりましたしね。
松尾氏 そういった、主にニトロプラスさんが持っている雰囲気は絵の面でも協力頂いているので、上手く出てくれたかなと思います。本来はささきむつみさんの絵だとこういう作品に合わせるのは難しいのかなという気持ちがあったんですけど、最初の色決めの段階から試行錯誤を繰り返してその雰囲気を作り上げていくところから始めましたね。
―キャラクターのイベントCGだとかはまだ合わせられるとは思うんですが、ニュージェネ事件のシーンとかは、明らかに雰囲気が違いますからね。
松尾氏 その辺はニトロプラスさんが全部作ってくれています。雰囲気はくっきり分かれているんだけど、上手く相乗しているかなと思います。
◆『CHAOS;HEAD NOAH』移植、のこと
―PC版の流れからコンシューマに移植することが決まったのは、どの段階になるんでしょうか?
松原氏 どの時期だろう……
林氏 えーと、発売直後くらいですよ。
発売後に『CHAOS;HEAD』の打ち上げみたいなものをニトロプラスさんと一緒にやったんですけど、その時点でもう志倉が話をしていましたからね。「えっ?」って、僕らはその時が初耳だったんですけど(笑)
Xbox 360に移植と聞いて、すごく驚いた記憶があります。
松原氏 あ、そうか。でも、僕はもうちょっと前から話はきいてたよ(笑)
松尾氏 自分らKIDに居た身としては、PCで出すんなら絶対にコンシューマに移植するだろうと、漠然とした思いはあったんですけどね(笑)
なので、実際に移植と聞いても「やっぱりね」と驚きはしなかったです。ただ、それがXbox 360というのはビックリしました。最初に思ったのは、大丈夫か?(笑)
松原氏 いやいや、Xbox 360は良いハードですよ。
松尾氏 当時はXbox 360というものについて、自分がよく知らない市場でしたし、作ったことがないハードだったので。
松原氏 実際のところ、『CHAOS;HEAD』を次世代ハードに移植しようと考えたところ、Xbox 360以外に選択肢がないんですよね。開発環境的にPCからXbox 360は移植作業がしやすいということもありますが、最初の出発点として、移植するにあたって"削る"ということはしたくなかったんです。『CHAOS;HEAD』の表現の部分が、移植可能なコンシューマ機というとXbox 360しかないんです。
松尾氏 コンシューマ化というと、ユーザーの一部ではそういう表現が抑えられることを心配している方もいるとは思うんですけど、『CHAOS;HEAD NOAH』ではそんなことはありません。
◆追加要素の目玉「ヒロイン固有ルート」、のこと
―シナリオ面でのボリュームも大幅にアップしていますが、やはりPC版で書き足りない所があったんでしょうか。
林氏 もともとPC版は1本道だったので、やれることが限られていました。バリエーションが少なくなるので、どうしても描ききれない部分があった。PC版のシナリオは主人公の"拓巳"くんのお話であって、ヒロインたちはあくまで登場人物の1人扱いになってしまっているので、そこを補完したいなという気持ちが僕の中にありました。
志倉から「移植にあたってシナリオを追加するとしたら、どうする?」って訊かれたとき、僕は「ヒロインの個別ルートを作りたいです」と。そうしたら「じゃあ、それで」ってあっさり通ってしまいました(笑)
ヒロインたちをしっかり描いてあげたい、というのが今回のシナリオの出発点ですね。PC版では描かれなかったヒロインたちの思いですとか、曖昧になっていた過去ですとか、きちんとやりつつちょっぴり恋愛要素もあったり、無かったり(笑)
―固有ルートというと、わりと恋愛要素がクローズアップされるとは思いますが。
林氏 『CHAOS;HEAD NOAH』の場合は固有ルート=恋愛、というわけでもないんです。主人公がああなので、なかなか恋愛させてあげられないというのもありまして(笑)
固有ルートの扱いとしては、ヒロインたちのお話ですね。
松原氏 あくまで『CHAOS;HEAD』という世界観の中で、ヒロインのストーリーをどうみせるかに重点を置いています。
―イラスト面でも、ヒロインのCGは増えてますか?
松尾氏 そうですね、PC版ではなかなか描けなかった"拓巳"と絡んでいる絵が今回増えてます。今までは悲惨な目にあっている絵はあったんですが、そういった絡みの絵はあまり無かったので、改めて描けたのは良かったですね。女の子とイチャイチャしてる、ということでもないんですけど(笑)
―そういったイラストの方が描きやすい、といったことはありますかね。
松尾氏 いやー、どうなんでしょう。でも、あまり殺伐とした絵ばかりだと心が難しくなってくるんですよね(笑)
だからといって、女の子とキャッキャ、ウフフやっている絵ばかりだと物語として盛り上がらないので。シナリオで描かれていることと、ディレクションで求められている絵を作っていくのが自分に与えられた役割です。それを、それぞれが思っているもの以上の表現が出来て、ユーザーさんに自然に見てもらえるように出来るのがいいんじゃないかなと。
―では、割と開発の現場でやりたいことが出来ているという形なんですね。
林氏 『CHAOS;HEAD NOAH』に関しては、現場の人間の考えを反映させる形で追加部分を作っています。『CHAOS;HEAD』の色々な解釈が詰め込まれている、と考えて頂いていいと思います。
PC版は完全に志倉の世界だったんですけど、そこに僕らがPC版を経て理解した『CHAOS;HEAD』の世界をさらに付け加えてゴチャゴチャにした。そういうものに『CHAOS;HEAD NOAH』はなっています。
―PC版をプレイした人間としてちょっと気になっていたんですが、ヒロインごとのルートが出来て、じゃあもとからあった1本道のシナリオには何か追加はないんでしょうか。
松原氏 演出面ではもちろんパワーアップしていますし、PC版であったルートの方もとある条件を満たすとストーリーの中に挟み込まれる、いわゆる「インターミッション」がごっそり変わるようになっています。あの場面で実は他のキャラがこういう事をしていたんだというような感じのシナリオが挟みこまれるようになっています。
林氏 1周だけじゃなくて、2周目以降も楽しめる作りになっています。PC版で曖昧にされていた部分も、今回はきっちりわかるようにシナリオでわかるようにしています。
―じゃあ、PC版をプレイして「ある程度、話がわかっているからもういいや」とは思わずに、遊んでみて欲しいところですね。
林氏 また新しい発見があると思います。
松原氏 謎解き編、みたいな感じに2週目以降も遊べますね。
◆アニメとの相乗効果、のこと
―『CHAOS;HEAD NOAH』の開発中にアニメ化もされましたが、その反響というか、影響を受けた部分はありますか?
松原氏 お遊びなんですが、アニメとのリンク要素で“拓巳”の部屋に置いてあったフィギュアのイラストをお借りして『CHAOS;HEAD NOAH』の部屋に置いてみたりと、そういったちょっとしたコネタを仕込むような事もやっています。
林氏 固有ルートを作るにあたって、アニメ版のプロットを見せていただきました。そこからインスピレーションを得た部分もあります。“セナ”編は、特にそうですね。アニメの展開にわざと似せていて、そこに僕なりの解釈を入れて違う展開にしています。
松尾氏 アニメは観てもらえる規模がやっぱりでかいので、反響も大きいですね。地上波は関東ローカルだけで、全国で観てもらうにはキッズステーションしかなかったんですけど、それでも『CHAOS;HEAD』というものを知ってもらうにはすごく役に立ったと思います。
アニメというものは一方的に流れるもので、深いところまで理解できない部分がどうしてもあると思うんです。でも、『CHAOS;HEAD』のアニメはPC版に沿って作ってもらえたので、違和感無く『CHAOS;HEAD NOAH』にも入ってもらえます。
あと、自分としてアニメ版と見比べてどう思われるか気になるのは、やっぱり絵の部分です。ゲームは動かない分、描き込めているということで違いがあるので、そういうところで原作としての『CHAOS;HEAD』の絵を見ていただきたいという気持ちもありますね。
―アニメが放送されて、“星来”のファンが増えたんじゃないかなと勝手に思っているんですけど(笑)
松尾氏 予想外の出番が多かったというか。“星来”はゲームでもアニメでも、自分が予想していたものとは違った動きをしているので、観てて笑っちゃったんですけど(笑)
「すごい扱いだ、こいつ!」とか思いながら観てました。
林氏 “星来”はアニメになって、より魅力的になりましたね。“星来”に関しては、“動き”というものが大きいと思うんですよ。
松尾氏 便利なキャラというのもあるとは思うんですが……ある意味象徴的だし。
あと、アニメで部屋に貼られているポスターが、まんまPC版と同じものだったのが観てて面白かったですね。「自分らの描いたものが、そのまま使われてるわ―」って(笑)
松原氏 ちょっと嬉しいよね。
林氏 PCの壁紙とかもね。
松尾氏 “拓巳”のPC周りは、全部そんな感じでしたね。
―PCからコンシューマへの移植の間に、アニメをはじめコミックやライトノベルなどさまざまなメディアミックスがありましたが、全体的に『CHAOS;HEAD』が広がっているという手ごたえはありますか?
松原氏 それは凄く感じました。特にアニメがはじまってからPC版の本数がさらに一段伸びました。アニメを入り口にユーザーが増えてくれているという実感はあります。
◆その他の追加要素、のこと
―ヒロインの固有ルートの他に、『CHAOS;HEAD NOAH』の追加要素というとどういうものがあるんでしょう。
松原氏 シナリオの他には、ゲーム中の挿入歌はすべて新曲になっています。あと、今まであったイベントCGにも手を入れたものもあります。
ムービーなんかも、後半のクライマックス部分に新しく入れたりしていますし、演出面での強化は大きいですね。
松尾氏 絵自体もハイデフになっています。
―やっぱり違いがあります?
松尾氏 自分は原画をすべて鉛筆で描いているので、線の粗い部分が目立っちゃうんですね。そういった部分は困るかな(笑)
松原氏 鉛筆のかすれとか、そういった部分も全部見えちゃうよね。
松尾氏 それ自体がデジタルにはない味だと思って、ずっと鉛筆で描いているんですけどね。ささきむつみさんは以前から全部デジタルに移行しているので、その線の細さを意識しながら描いていた部分もあるんですが、線自体も難しくなりました。まぁ、そんな綺麗に映されたらね、粗があったら目立っちゃう(笑)
これから全部デジタル、っていうことになると綺麗かもしれないけど、勢いとかがどうなっちゃうのかなと。そういう粗さも勢いという部分に生きていると思うので、そこを見ていただければなと。
―そこを理解してくれるユーザーもちゃんといるとは思いますよ。
松尾氏 より、そういう細かい部分がわかるようになってきたということで、自分たちが伝えたいと思っている意図がそのまま伝わるんだったら、怖がる以上に良いことだと思います。塗りも綺麗にして、ニトロプラスさんでやっていただいた演出もより伝わるようになると思うので、単純に綺麗になっているということ自体が絵の部分のパワーアップだと考えています。
そこを意識しないで自然に受け入れてもらうことが、絵や音楽にとって一番の達成点なんですが、それだけだと作っている側はちょっとさみしい(笑)。なので、「ああ、なるほどね」と気づいてもらえると嬉しいです。
―ささきむつみさんのキャラデザを生かす、ということも重要ですしね。
松尾氏 絵はささきむつみさんのキャラクターありきでやらせていただいています。キャラクターデザインだけでなく監修もやっていただいているので、デザイン意図は崩さないように気を付けて描いています。
―ゲームのCGも違和感無く見れました。
松尾氏 自分は『CHAOS;HEAD』の前に『Memories Off』の2作品で同じようにささきむつみさんと仕事をさせて頂いていたので、積み重ねたものもありつつ違和感を無くせるようにやりました。
ゲームを遊んで絵を見た人が自然に受け入れてくれていれば、自分の中で成功ですね。
―音楽面でもボーカル曲を多数追加、というのはやっぱり5pb.さんの強みだと思いますが、それはやっぱりキャラクターソングがあったからなんでしょうか。
松原氏 キャラクターソング自体は、『CHAOS;HEAD NOAH』があるから歌を作ろうという企画でした。Xbox 360版とほぼ同時に始まっていて、「これから作るキャラソンを『CHAOS;HEAD NOAH』に絡めていきたい」というスタートでした。なので、歌詞の内容とかも密接に関わっていますね。
林氏 ほぼ『CHAOS;HEAD NOAH』のシナリオ作りとキャラソンの音楽・歌詞作り作業は同時進行だったので、強くリンクしています。曲に合わせてシナリオを作っているし、シナリオにあわせて曲を作っているという、お互いに良い方向で盛り上がるようにしています。リンク性がとても高いキャラソンだと思います。
―キャラソンはすでに聴かせていただいているんですが、シナリオに深く関わる歌詞に思えましたね。
林氏 その分、調整に結構苦労してます(笑)
ちょっとバッドな雰囲気の終わり方なのに、明るい雰囲気の曲だったりすると、演出をどう調整しようかなと。結果的には上手く調整できたと思います。
松原氏 あと、システムの細かい部分についてですが、コンフィグで設定してもらえれば「スキップ中でも妄想トリガーで止まる」ようにできます。
林氏 あー、そこはPC版で不評だったですからね。
松原氏 この場でちゃんと言っといた方がいいかなと(笑)
◆魅力的なキャラクター、のこと
―キャラソンの話の流れで、それぞれお気に入りのキャラクターやエピソードがありましたらお願いします。
松原氏 『CHAOS;HEAD NOAH』になって、僕は“梢”が好きになりましたね。
今回の“梢”ルートというのが、ある意味CEROレーティングで“Z”になった原因というか。
(一同笑)
松原氏 PC版では隠されていた“梢”の本当の本心が見えるというか、このキャラはどういうことを考え、どういう生き方をしてたかがちゃんとわかるようになってます。“梢”エンドは、良いですよ。
松尾氏 おかげで血まみれの絵ばかり描かされました(笑)
林氏 血みどろですね、“梢”ルートは。
松尾氏 あと、「こういう演出にしたらいいんじゃない?」って自分で言ったがために、すごいでっかい紙に原画を描くはめになったりとか(笑)
林氏 PC版で血まみれキャラというと“梨深”だったんですけど、“梢”はそれを上回る血まみれっぷりなので、お楽しみに(笑)
ただ、それだけじゃなくて“梢”の可愛い部分もちゃんと描いています。どうしても初登場が他の5人のヒロインよりも遅めだったこともあり、PC版では出番が少なかったんですよね。
―“セナ”とセット、というイメージはありますね。
林氏 そうですね、それで“梢”の可愛い部分をあまり深く掘り下げられなかったんですが、今回はキチンと描いて、可愛く。でも、血まみれ。
一番の見せ場は、やっぱり「ちんすこう」ですよね。
松原氏 あぁ「ちんすこう」ね(笑)
林氏 "拓巳"が“梢”に「ちんすこう」と言わせようとする選択肢があるんですけど(笑)
そこには、あえて今回イベントCGを作りました。僕はそのシーンを何回やっても噴いちゃうんです(笑)
自分で書いてそうなので、そうとう面白いことになってます。そこは期待していただければ。
―それでは、林さんのお気に入りのキャラというと?
林氏 今回、“セナ”ルートでお父さんの出番が増えてます。この親子の会話には、ちょっと哲学的な部分があって、現実と妄想の境界があいまいになるというテーマを一番表している会話をさせていますね。
PC版だと、“セナ”が一方的にお父さんを憎んでいて、最後にちょっとかわいそうな目にあってしまうんですが、実は絡みとしてはあまりなかったんですよ。
今回、改めて“セナ”ルートで絡ませたことで2人の微妙な心境、複雑な関係を描けて、なおかつテーマも描けたと思います。なので、この2人のセットは良いなと。
―では、松尾さんは?
松尾氏 自分はどうかな。絵的な話を言わせてもらえば、今回は“あやせ”が面白かったかなと思います。あの人は特殊なので、いろんな面を描くことになるんですが、そういうことを含めて。あと、演出的にもアイディアを出して見せ場になるシーンを作っているので、それがうまく受け入れてもらえれば達成感が高まるんじゃないかなと。
林氏 僕は、“あやせ”はよりエロくなったと思います。榊原ゆいさんにそうとう頑張っていただけまして。「それ、やりすぎじゃないの?」って思うぐらい(笑)、やっていただけました。公式サイトのサンプルボイスを聞いていただければわかるかと。
あのシーンを録る時に、榊原さんに「本気でやっていいですか?」っていわれて、「ぜひお願いします」と軽い気持ちで答えたんですが、聴いてみたらビックリしちゃいました(笑)
松尾氏 収録現場、見たかったな〜(笑)
林氏 僕と松原で、聴きながら「これ大丈夫かな…」って。
松原氏 ドキドキしちゃいました。
林氏 いろんな意味でドキドキ(笑)
―そういうドキドキは、キャラソンCDの妄想トリガーボイスドラマにもありますよね。
林氏 榊原さんの声が色っぽいので……溢れ出る、エロス! ですかね(笑)
松尾氏 “あやせ”は、妄想でもそういうシーンが多いキャラですからね。下着姿から始まって、スク水があり、衣装替えも結構多いキャラです。あの服とかも、自分でデザインしましたが大変なんですよね(笑)
―服装のパターンも『CHAOS;HEAD NOAH』では結構増えているんでしょうか。
松尾氏 そうですね、服装はちょこちょこ増えてます。
―パターンを多くするとその分作業量も増えるので、大変ですよね。
松尾氏 『CHAOS;HEAD』は目パチもあったので、地道に大変でした。あとは、単純に全部1人で描いているというのもあります(笑)
林氏 今回は“拓巳”も気持ち悪いキャラのまま、吉野さんに全力で演じていただいたので、そこも楽しみにしていただきたいです。
松原氏 “拓巳”というキャラは凄いね。
林氏 なんであれが受け入れられたのか、今だに不思議です(笑)
松尾氏 今のゲームをプレイしているユーザーにとって、それだけああいった生活が違和感なく受け入れられるということなのかな。
―そういうディテールもありますが、キモイ人格になったバックボーンがまだ理解できる範囲だったからじゃないでしょうかね。
松尾氏 “拓巳”に関しては、キモイままでバックボーンとかなくても良かったけどね。だって、ある意味憧れの生活だもの(笑)
林氏 ダメな方向ですけど、でも憧れますね(笑)
松原氏 あのコンテナハウスは、ちゃんとクーラーが付いてるんだよね。
林氏 あとトイレは、ちゃんとビルのものを使っています。洗面台とシャワーは、部屋の外にあります。今回はその部分もちゃんと出てきます。
松尾氏 結構みんな疑問に思っていたみたい(笑)
林氏 逆にそこで違和感を与えているんですよ。ビルの屋上にコンテナがある、そして住んでいるということに違和感を感じていただければ、こちらの意図としては成功です。あえてリアルじゃなくしている、ということですね。
◆弊社の訊きたかった話、のこと
(主にゲロカエルんについて)
―演出面では、バトル描写の強化といった事はないんでしょうか。
松尾氏 バトルらしいバトルが全然ありませんからね(笑)
ディソード自体は“心の鍵”の表れで武器ではないので。そもそも、企画の最初は戦闘シーンとかが1つもないかもしれないと言われてたくらいです。
松原氏 でも、今回は最後の方の戦闘演出はパワーアップしています。
林氏 固有ルートでも、新しい戦闘シーンがあります。血みどろになったりします(笑)。
松尾氏 ディソード自体のデザインは、CHOCOさん(『CHAOS;HEAD』プロダクトデザインを担当)がすごくいいものを出してくれました。あのデザインをニトロプラスさんの方で3Dに起こしていただいたものを、CGにあわせています。それありきで、良い戦闘シーンができていると思います。
3Dであわせていく作業というのは、自分はここまでのことをやったことが無かったので、その辺では苦労したんですけど、上手くアジャストして助けていただけました。
松原氏 最初から3Dありきで作業していたからね。
松尾氏 “野呂瀬”のディソードとか、CHOCOさんは容赦ないデザインを出してきますからね(笑)
逆に、ゲロカエルんは楽な気持で作らせていただきました。
―自分もグッズのストラップを愛用しているんですが、これは秀逸なデザインですよ(笑)

松尾氏 みんなそう言ってくれるんだけど、本当かな〜って思いますよ(笑)
劇中でも言われてますが、なんたる手抜きデザイン。それが本当に作られて売られているというのが(笑)
みんな、洗脳されてない?
林氏 されてます。
松尾氏 ね。
―ゲロカエルんのストラップは、新しいバージョンも制作中みたいですね。
松尾氏 デブっちょゲロカエルんですね。
―いつ頃発売されるか気になっているんですが。
ニトロくん (小声で)春くらいじゃないかな〜。
―やっぱりイベント会場とかで販売されるんでしょうか。
ニトロくん (小声で)どうかな〜。
(一同笑)
松尾氏 なんでそこでぼやかすんですか(笑)
ニトロくん まだ決まっていないので(笑)
オフィシャル通販で販売するか、どうかですね。
松尾氏 ストラップがまた良くできているんですよ。すごい再現度ですよね。
―さわった感触がまた良いんですよ。
松尾氏 そうなんですよね。そこが良く工夫してくれたなと。
ニトロくん でも、次のデブっちょゲロカエルんは携帯電話には付けられないですね。
松尾氏 あー、デカイですからね。
ニトロくん 女子高生とかにつけて欲しいですね。
松原氏 そういうムーブメントになったら、嬉しいですよね。
松尾氏 デブっちょの他にも、劇中で名前が登場する物はデザインラフもあるんですけど、実際に商品にするためには一部改造が必要だったりしました。
『CHAOS;HEAD』は、こういったグッズだったり周辺の展開が大きくあったので、それもあり認知度が高まってくれたんだと思います。それがまた広がっていけば、さらに面白いことができるんじゃないかなと。
◆今後の展開? のこと
―『CHAOS;HEAD』からは離れますが、昨年末のニトロプラスさん発表会でコラボ企画の第2弾が進行中と明かされましたが。
松原氏 現在言えることは、“秋葉原”っていうことだけですね。
―ゲーム、ではある?
松原氏 ゲームです。
―特に『CHAOS;HEAD』の続編ということでは?
林氏 続編では…ないですね。
松尾氏 一応は妄想科学ノベルシリーズだよね。
林氏 ちょっと違うよ。
松原氏 でもまあ、同じ(ニトロプラスさんとの)流れの中で作っていく作品ですね。表に出る雰囲気は違うかもしれませんが。
林氏 根底にあるテーマというか、コンセプトは同じものですね。
―開発は5pb.さんということなんですか。
松原氏 ………まだ決まっていないんです、ぶっちゃけ(笑)
―では、発表を楽しみに待っています(笑)
◆最後に
―それでは、最後に発売を待っているファンへのメッセージをお願いします。
松原氏 『CHAOS;HEAD NOAH』は、Xbox 360でのノベルゲームの第1弾です。だからというわけじゃないですけど、かなり気合を入れて作りました。PC版から入った方もアニメから入った方も楽しめる作りになっていますので、ぜひぜひ、期待をしていてください。
林氏 固有ルートが入ったことで、ヒロインの可愛らしさが強調されています。と、同時に怖さも強調されている(笑)
すべての固有ルートに、一筋縄ではいかないシナリオを用意しているので、PC版をプレイされている人もアニメを観た方も新たなドキドキを感じていただければと思います。
松尾氏 Xbox 360本体と一緒に買って後悔をしない! と思いたい(笑)
これをきっかけに買ってもらえれば、十分遊べる作品になっています。5pb.とニトロプラスさんという、2つの会社が協力して作り上げているので。お互いに自信がなければ、そういうタッグも組めないですから。これからの動きにつなげるためにも、その出来上がりを皆さんにぜひ見て頂いて、どしどしご意見を送っていただきたいです。やっぱり感想がないと作り手側もね。
自分もXbox 360本体ごと買います(笑)
―ありがとうございましたっ!
ロングインタビュー、いかがだったでしょうか。
弊社もPC版はプレイさせていただいているのですが、改めて『CHAOS;HEAD NOAH』も遊びたくなってまいりました。発売まで、あと10日か……。
明日以降も『CHAOS;HEAD NOAH』関連の記事を順次掲載していきますので(内容はまだ秘密)、ファンの皆様におかれましてはぜひチェックしていただければと思います。
それでは、まったあっした〜。
■『CHAOS;HEAD NOAH』
メーカー:5pb./ニトロプラス
プラットフォーム:Xbox 360
ジャンル:妄想科学ADV
発売日:2009年2月26日(木)
価格:初回限定版 9,240円(税込)
通常版 7,140円(税込)
スタッフ(敬称略)
企画・原作・主題歌:志倉千代丸
ディレクション:松原達也
キャラクタデザイン:ささきむつみ
プロダクトデザイン:CHOCO
シナリオ:林直孝(5pb.)
原画 :松尾ゆきひろ(5pb.)
(C)2008-09 5pb./Nitroplus/RED FLAGSHIP
■関連記事
発売記念イベントも開催決定! ヒロインごとにシナリオを追加したXbox 360『CHAOS;HEAD NOAH』が2月26日Re;boot
■関連サイト
『CHAOS;HEAD NOAH』公式サイト